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 開票速報の前に。

今日は衆議院選挙の投票日である。私自身はゼミの合宿でしばらくこの話題からは距離があったものの、巷間では毎日のように選挙運動の車が走り回り、候補者の動静(とりわけ「刺客」注目選挙区における候補者の動静)が新聞をテレビをにぎわせていた。注目度が高いことも重要な点で、個人的には投票率がどの程度まで高くなるか、大きな期待を持っている。

ところで今回のこの選挙だが、私には投票権がない。そもそも今回の選挙において有権者とは、選挙の公示日からさかのぼって3ヶ月前に作成される「選挙人名簿」に記載されている人である。今回の場合は、公示日が8月30日で、その3ヶ月前は5月30日となり、私は5月30日はまだアメリカにいたために、選挙人名簿には有権者として記載がされなかった。従って、残念ながら今回の選挙には投票することができない。(留学中は住所変更の届け出を行い、米国在住ということになっていた。ちなみに、帰国して新宿区民になったのは6月28日で、さらに付け加えると、7月上旬に行われた都議会議員選挙でも、同様の理由により投票することができなかった。)

従って、自分にとってこの選挙はいつもの選挙とは異なり、傍観者であるという意識も強く、いつもより真剣に観察もしていなければ、あまり政策についても考えていない。しかし、開票前のこの時間にいくつかの感想を書き留めておきたいと思う。

まず、マニフェストについてである。
前回の2003年の選挙あたりから、どの政党も政権公約(マニフェスト)を作成するようになった。こうすることで、より各党の政策がわかりやすくなり、政策論争も活発になりつつある。それ自体は大変望ましいことである。

とはいえ、私から見れば今回の一連の解散劇は、結局のところマニフェストに基づく政治と選挙がまだまだ根付いていない、ということを露呈したように感じられる。

そもそもマニフェストに記載されていることは政党の公約であり、選挙に臨んで各党が作成するもので、当然に党内で各政策について意見の一致がとられていなければならない。前回の衆議院選挙に際してもマニフェストは公表されたが、自民党のマニフェストには、郵政民営化についての政策と公約が記述されており、自民党はマニフェストにかかれたことを、政権党として実現していく義務を有権者に対して負っていた。

衆議院の選挙にともなって作成されたマニフェストであるため、参議院における郵政民営化法案の否決はあり得たとしても、いったんは合意したはずの公約に異を唱え、党を離党し、新党を結成して、さらにまったく反対の政策を主張することは、公約の完全なる軽視・無視であり、このマニフェスト自体に、そもそもの合意がなかったことを証明している。これはマニフェストに書かれている政策を支持して投票した有権者に対する背信行為であり、民主主義を冒涜するものであると考える。結局のところ、まだまだマニフェストに基づく政治はこの国にはまだまだ根付いていないということなのだろう。

今回の自民党のマニフェストに関しても、具体的な数値目標と達成の手順についての記述が乏しく、実際にこの4年間でどのような政治が進められるのか曖昧な点が多い。マニフェストを逐一作成し、有権者に政策を訴えて、政策にもとづいて選挙と政治が行われていくこと自体は歓迎すべきだし、当然これからも継続して実施してくべきであるが、残念ながら与党には、まだマニフェストがどういうものであるか、わかっていない議員が多いように感じられてならない。

とはいえ、曲がりなりにもマニフェストなるものが作成され、選挙戦と政策論争が展開された。ここで、各野党についても少しコメントをしておきたい。

まず民主党であるが、民主党が残念なのは、与野党が主導した「郵政解散」という枠組みにのせられて、世論が期待するところとなってしまった郵政民営化についての、明確な立場が示せなかったことである。民主党の支持母体の影響力を考慮に入れれば、たしかに郵政民営化について明言しにくいという立場の微妙さは理解できるものの、郵政民営化後の与党政権のプランを批判することなど、よりわかりやすい訴え方も可能であったと考える。望むと望まずとに関わらず、郵政民営化が最大の争点となってしまった今回の選挙において、郵政民営化について一定の政策を示せなかったことは大きな失敗であり、大幅な議席の減少をもたらす可能性もあろう。(マニフェストについては、かなり踏み込んだ内容まで議論されており、そのうえで数値目標も意識して作成したことがうかがえ、この点においては評価できるものとなっている。)

社民党についても同様に、明らかに選挙戦略に欠陥があり、このために今回の選挙において、党の存続が危ぶまれる自体さえ考えられる。社民党が最大の争点として掲げているのは憲法9条であるが、確かに憲法の論議は国の根幹に関わる重要な論点であり、国会議員の3分の2以上が回生を前向きに考えているという現状を考えれば、間違いなく次の2年から3年の間に、憲法の改正が具体的な政治日程に上ることとなるだろう。しかしながら、今回の選挙に際して、それを最も重要な争点と設定することは、明らかな勘違いであり、支持を得られることは考えにくい。護憲を主張する勢力は存在するものの、それ以上の支持を広げることは困難であるし、反対にこの戦略が支持者を離れさせる可能性もはらんでいる。加えて、テレビCMが他党に比べてかなり質が低い。多大な費用とともに大きな効果を持っているのであるから、積極的な投資が望まれたところであった。

一方で、共産党の「たしかな野党が必要です」という主張は非常に明確でわかりやすい。常にはっきりとした態度を示すことについては好感が持てるが、それが世論の幅広い支持を得るかどうかとはまったくの別問題であり、今回も議席を減少させるであろう。とはいえ、それが党の存亡に関わるほどの減少とはならないと考える。

そのほかの野党(新党日本・国民新党)に関しては、選挙後の去就が注目されるところだ。自民党と民主党のどちらにも合流する可能性があり、現実的には考えにくいかも知れないが、民主党が大幅に躍進した場合は、民主党と合流(あるいは連立)して政権を担う可能性も出てきている。自民党と民主党の両方が合流を歓迎しており、結果次第では、大きな政界の再編をもたらすだろう。

さて、いよいよあと2時間半あまりで投票が締め切られ、開票が始まる。今晩はテレビに釘付けで開票速報を見守ることになりそうだ。(結果についてはまた改めてコメントしたいと思います。)

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