3月6日の母親からのメール。
タイトル:今日は啓蟄
本文:暖かいを通り越した陽射しになった
例の団子……ちゃんと置きましょうね。
何事も予防が大事だよ
ひとり暮らしを始めてから、もう10年以上が経過しているものの、この間、お目にかかったのはおそらく数回程度。特別な対策をしていたわけではなかったが、自分自身も相手が好きではないし、相手もきっとそんな自分を好んでいなかったのだろう、お会いする機会は、決して多くはなかった。
しかしながら昨年になって、2度も連続してお会いする機会があったため、やむなく本格的な対策をとらざるを得なくなった。ひとり暮らしをし始めて初めて、スプレー等を購入し常備した。(これまで持っていなかったという事実が、いかに出会いがなかったかを物語っていよう。)
そうした一部始終を、年始に帰省したとき、話題にしたところ、「だんご」なら年に1度の作業で、手間暇をかけることなく、対策ができるとのこと。さすがに去年はもう懲りたので、さっそく導入することとして、実家で使っているのと同じものをもらった。
そして、啓蟄から数日が過ぎた先日、ようやく作業のための時間がとれたので、配置に取りかかった。
パッケージをあけると、何ともフルーティでいい香りがただよう。
「わざわざご本人を呼び寄せてしまうのではないか」と心配したくなるくらいで、外箱にも「好みのブレンドで~逃さず誘う」とあり、本来なら「誘いたくもないし、むしろ逃がしたい」という心情とは、著しい乖離を感じざるを得ない。啓蟄の日に出てきたところを、そのまま家にお呼びしているような錯覚すら覚えてしまう。
母親によると、「目で見えない隅っこ」が配置のポイントのようで、間取り図に図示してもらった感じでは、特に洗濯機や冷蔵庫、洗面のまわりなどに重点的に配置した方がよいとのこと。たかだか26平米の部屋に、18個は多いかとも思ったが、保存できるわけでもなく、余らせても仕方がないため、母親おすすめのポイントの他に、トイレやベッドの下、机と壁のすき間や窓際など、いかにもお会いできそうなところに、まんべんなく配置した。
効果が目に見えてこないことこそ難点だが、この件に限っては、出会いはないほうがいいので、お会いできなくて残念というところで、よしとしなければならないのだろう。今年は安心して夏を過ごせることを期待したい。