市井に生きるセクシュアル・マイノリティの可視化を
- 一歩一歩、着実な取り組みを重ねることで、社会を変える!
藤田 裕喜(レインボー・アクション 請願・陳情チーム チーフ)
「テレビなんかにも同性愛者が平気で出るでしょ?日本は野放図になりすぎている」
「(同性愛者は)どこかやっぱり足りない感じがする。遺伝とかのせいでしょう。マイノリティで気の毒ですよ」
2010年12月、石原都知事はこう発言した。性的指向を理由とする差別をなくすことも、当時全国で実施されていた人権週間の強調事項のひとつであったが、メディアであまり大きく取り上げられなかったためか、さほど問題視されるような事態にはならなかった。また、数ある当事者団体からも、当初は何一つ抗議の意思表明がなかった。
このことに問題意識を感じ、ネット上での呼びかけに応じた人が集まって「石原都知事の同性愛者差別発言に抗議する有志の会」を立ち上げ、イベントやデモの実施を経て、レインボー・アクションと改名、現在に至っている。
レインボー・アクションでは、行政やメディアへの対応・対策、また、デモを始めとする街頭アクションの実施など、目的や対象別に責任者を決めて、それぞれの分野で活動を展開している。このうち私は、行政や政治に対する働きかけを担当している。
2011年11月には全都議会議員に向けて、セクシュアル・マイノリティの人権に関するアンケートを実施。回答のあった議員とは直接面談し、要望を伝える機会を得た。また、これがきっかけとなり、千代田区議会では初めて、セクシュアル・マイノリティに関する質疑が実現した。
行政との折衝は長期に及ぶことも多く、たとえ議会で取り上げられたからといっても、施策がすぐに進展するものでもない。むしろ、行政の内部における味方をだんだんと増やしていくような活動に近い。
一方で、今日明日にでも自殺を選択せざるを得ない当事者がいることを思えば、活動に一刻の余地もないことは明白で、歯痒い思いを感じない日はない。そうした自分の無力さを悔いながらも、ひとつひとつの取り組みの積み重ねが、市井に生きるセクシュアル・マイノリティの可視化につながり、ひいては誰もが生きやすい社会の実現に資すると確信している。そして、その歩みをこそ、止めてはならないと考えている。また、ひとりでも多くの、声を上げられない当事者に対して、味方になってくれる人がいること、身近に仲間がいることを伝えたい。私自身が活動に関わる理由、そしてその役割の重要性は、まさにこの点に集約されている。この思いを胸に、今後も活動を力強く進めていきたい。
(ふじたひろき)