「県知事選挙っていまいち盛り上がりに欠けるよね!?」

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「県知事選挙っていまいち盛り上がりに欠けるよね!?」

ついひと月ほど前の、私と、ある友人との会話である。広島市在住のこの友人とは学生時代からの付き合いで、同じゼミに所属し、ゼミの内外を問わず、政治経済から国際情勢まで、天下国家を侃々諤々に議論してきた仲である。「選挙が盛り上がりに欠ける」などという発言をしようものなら、「意識が低い」だの「地方自治の精神に悖る」だの「憲法を学んだ人間とは思えない」だの、考えられうるすべての批判と非難が返ってきそうなものであったが、今回はなぜか一致してしまった。なぜか。

 「盛り上がりに欠けていて、候補者もよくわからないし、第一、県政は身近に感じられない。誰がなってもいっしょとは、さすがに思わないが、めぼしい争点もないし、みんな新人で、どうせやってみなければわからないから、今回は期日前に白票を投じて、静かに結果を見守ろう」・・・と公示前後は思っていたが、冒頭の会話が気になって、その理由を探してみたくなった。できる範囲で今回の知事選を追いかけて、それで結果として、やはり盛り上がりに欠けると判断できれば、それはそのときに白票を投じればよいし、思う候補が見つかればその候補に投票すればよい。その意味では投票日まで考える猶予が与えられていると言える。そこで、特別な負担なく入手できる情報源として、中国新聞の報道を題材にしながら、今回の広島県知事選を考えてみることにした。

 さて、今回の広島県知事選挙における候補者は次のとおり(届け出順)。

 無所属で学習塾経営の川元康裕氏(42)、無所属で元県議の柴崎美智子氏(54)、共産党公認で党県委員長の村上昭二氏(62)、無所属で経営コンサルタントの湯崎英彦氏(44)、無所属で元県議の河合案里氏(36)。いずれも新人である。

 こうしてみると、共産党を除くいずれの候補も、政党からの推薦や公認を受けない無所属新人の候補ばかりで、先の国政選挙やこれに続く各地の補欠選挙で見られたような、わかりやすい政党間対立の構図はない。だが実は、これこそが「盛り上がりに欠ける」と感じた主因の一つであり、一見して投票する候補を絞り込むことができない理由になっているのではないか。

 公示直後の中国新聞の記事によれば(2009年10月23日)、自民党県連は、県議会で会派が4つに分裂していることから自主投票を決め、国民新党代表は個人的に河合氏を応援、民主党県連も議会内での協力関係を踏まえて、独自候補を擁立せず、一部自民党会派と協力して湯崎氏を支援する方針であり、公明党と社民党は自主投票を決めている。なお、河合氏は立候補の直前に自民党を離党し、県議を辞職している。無所属として立候補している柴崎氏は、もともと民主党所属の県議会議員であったが、民主党県連の反対を押し切って立候補に動いたため、民主党を除籍されている。こうした政党間の争いから無縁なのは、川元氏と、独自候補として村上氏を擁立した共産党だけであり、以上からもわかるように、従来の「政党が支援する候補者=政党の候補者」という枠組みが通用しない。

 また、選挙の動静に大きな影響を及ぼす業界団体の行方も、自民党の分裂と政権交代が響き、特定の候補を支援する動きは広がっていない(2009年10月29日・中国新聞)。

 こうした中、中国新聞社が実施した世論調査の結果が、11月2日付紙面に一面トップで掲載された。

 「湯崎氏と河井氏先行」「広島知事選『関心ある』54%」との見出しである。同日までの報道では、散々政党対決色が薄く、構図がわかりにくいと評されてきた選挙戦であったが、中間発表を踏まえ、結局のところ、二大政党の対決になっていることが鮮明に見て取れる。すなわち、湯崎氏については基本的に民主党の支援を受け、河井氏については自民党支持層の支援を受けているとの構図だ。湯崎氏については、民主党の国会議員が応援演説に立っているし(2009年11月2日・中国新聞)、選挙戦の最終日には、自民党総裁選に立候補した河野太郎氏が、河合氏の応援演説にわざわざ広島まで駆けつけている(2009年11月8日・中国新聞)。

 また、河合氏を個人的に応援している亀井静香氏は、現在でこそ、民主党と連立与党を組む国民新党の代表であり、自民党とは一線を画しているが、もともと長い間自民党の議員だったのであり、広島に帰れば亀井静香氏の支持層は自民党の支持層と大きく重なっている。したがって、地元有権者から見れば、国政では民主党‐国民新党‐亀井静香氏であるのに対し、県政では亀井静香氏‐国民新党‐自民党会派が応援する自民党を離党した河井氏という「ねじれ現象」が生じているといえる。まさに「国政と県政では状況が違うのかもしれないが、私たちにはよくわからない」といった状況が生まれている(2009年11月5日・中国新聞(カッコ内はインタビューの引用))。ごもっともである。

 こうした複雑な構図ゆえ、各候補の政策にも目立った違いが見られず、有力候補2氏も各方面に配慮する結果、確定的・断定的なことが言えず、独自色を打ち出せていない。

 例えば、今回の選挙における、もっとも大きな争点のひとつであろう、鞆の浦架橋計画についてだが、有力と目される2人の候補にいたっては、判断を留保しており、真意がわからない。他にも広島西飛行場の去就や、岩国基地への艦載機移転、中山間地域や島しょ部における行政、経済・雇用、さらには五輪招致についても、今後大きな課題となってくるだろう。問題は山積している。だが、各候補者はどうしたいのか、よくわからないし伝わってこないうえに、候補者間の違いもはっきりしていないようにすら感じられる。

 反対にこれは、明確に意見が分かれ、わかりやすくかつ大きな争点がないことの表れでもある。郵政民営化や原発誘致、米軍基地の県外移転のような争点とは、明らかに性格が異なる争点でもある。わかりやすい争点が必要であり、そのような争点があればよいという話ではない。だが、そうした争点がないと関心が高まらない。結果として、投票率が低くなる。悪循環に陥っているのだろうか。

 中国新聞記事によれば、広島県知事選挙の投票率は、長年、低下傾向にあり、直近の3回の選挙では過去最低を更新し続けている(2009年11月7日)。2005年の前回の選挙は27.14%であり、残念ながら信じられないほど低い水準と言わざるを得ない。現職の引退が伴う選挙であり、候補者はいずれも新人であることから、投票率は上がるとする向きもあるが、どうだろうか。

 むしろ、もともと県政に対する関心それ自体が低いのではなかろうか。手が届く・目に見えるコミュニティの範囲内であればこそ、政策決定過程に意思を表示し・参加をしたい・参加しなければならないと考えるとすれば、県という単位は大きすぎるのか。それとも大きな問題は国政が解決してくれるのか。あるいは都道府県に準ずる権限を持つ政令指定都市たる広島市の市民は、そもそも県政に期待していないのか・・・。

 ここまでの検討の結果、今回の県知事選挙について、少なくとも公示以前にはまったく関心がなかったが、報道をさらっていくうちに、構図や争点が見えてきた。そして、最終的には候補者を絞り込むことができた。結局、投票を決定するまでに投票日の今日まで時間がかかってしまったが、県政の観点からも、地方自治の観点からも非常に興味深い選挙であると振り返ることができよう。あとは結果を待つのみである。また、結果はどうあれ、今後の県政に期待をもちつつ見守っていきたい。

hiroshimagovenorelection

<追記>
 なお、このたびの選挙でも、ついぞ候補者ご本人にお目にかかることはできなかった。2ヶ月ほど前の衆議院議員選挙でも同じであった。私の生活パターンや行動範囲、仕事をしている時間帯など、候補者の側も費用面や選挙区の広さ、様々な要因がからみ合って行き違いとなってしまったはずだが、同時に非常に残念な思いもある。(これだけ関心の高い有権者を放っておくとは!!(苦笑))

 候補者の顔が見えれば、もう少し身近に選挙を感じることができたかもしれない。

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